3月1日(日)に、「科学のびっくり箱!なぜなにレクチャー 空力ボディ」を開催しました。

講師は、トヨタ技術会の皆さんです。
※トヨタ技術会
トヨタ自動車に勤務する社員が任意で加入する団体で、社内のエンジニアを中心に組織されています。会員の技術・技能の向上および親睦を図り、さまざまな事業の技術分野の発展への寄与と地域社会への貢献を目的としています。

今回は、クルマの形と空気の流れについて学び、空気抵抗の少ないクルマ作りに挑戦します。

自動車には排気量や乗車定員などの異なる様々な種類がありますが、その車体の形(デザイン)もいろいろです。例えば、スポーツカーはカッコいい形をしていますが、これは走る時に空気を押しのける力を減らしたり、車体が浮き上がらないように形を考えているからです。良い形にすれば、同じエンジンでも速く走れるようになるのです。

実際、自動車の走行中に空気がどのように流れているのかを講師に見せてもらいました。風洞実験装置の中に自動車模型を入れ、風にドライアイスの煙を乗せて可視化します。模型の形によって、空気が全く違う動きをすることがよく分かりました。
※風洞実験装置・・・人工的に風の流れを発生させ、実際の流れの様子を再現・観測する実験装置


15空力① 15空力②

空気抵抗の少ないクルマとは、どんな形をしているのでしょうか。最初は特にヒントをもらわず、とにかく自分達がイメージする、あまり抵抗が無さそうなクルマを作ってみます。
それでは製作開始!車台となるプラスチックダンボールに、両面テープで発泡スチロールのブロックを取りつけます。このブロックをクルマの乗車席と考えるため、けずったり取ったりすることはできません。そして、指定された画用紙を使ってクルマのボディを形成していきます。 

使う材料やルールはみんな同じ。あとはすべてボディのデザイン次第です。誰一人として全く同じクルマにはならず、自分の頭で考えたことが、そのまま結果に反映されます。まずは型紙の一番下のスペースに、クルマを横から見た形を鉛筆で書きこみます。乗車席がしっかり入るようにチェックして、風の流れを想像しながら何度も鉛筆を走らせます。形が決まったら、はさみで丁寧に切りぬきます。


15空力③ 15空力④
15空力⑤ 15空力⑥’

乗車席の側面に当ててみると...。う~ん、なかなか良い感じかな?!
続いて、切りぬいた型紙を使い、実際にボディの下書きをします。クルマの側面部分は、上部になる箇所を中心に蝶(ちょう)の羽のように左右対称にしておく必要があります。型紙を当てながらズレないように鉛筆でなぞり、それをクルリとひっくり返して、もう一方の側面を書いていきます。
キレイに書けたら、はさみで切りぬきます。シャフトが通る部分には、小さな切りこみを入れておきます。


15空力⑦ 15空力⑧
15空力⑨ 15空力⑩

紙に折り目をつけ、セロテープで貼りながらボディの形にしていきます。想像していた通りの形になっているかな?!
「すき間や、雑なところがあると空気抵抗が大きくなるから、ちゃんと確認してね!」
いろんな角度からじっくり見直し、ボディを車台に貼りつけます。プラスチックダンボールにシャフトを通し、タイヤの取りつけが完了したら、ついに出来上がりです。
早速、風洞実験装置を使った抵抗値の計測に入ります。


15空力⑪ 15空力⑫
15空力⑬ 15空力⑭

装置の片側で勢いよくファンが回り、透明な筒の中には強風が発生しています。クルマの裏にクリップを取りつけ、そこに測定器から延びた紐を引っかけてから、講師は筒の中にそっとクルマを入れます。
紐がピンと伸びた状態でクルマは止まりますが、強風が当たっているため走っているときと同じ抵抗がかかります。測定器に表示された抵抗値を講師が読み上げ、1人ずつ数値が記録されます。


15空力⑮ 15空力⑯
15空力⑰ 15空力⑱

計測が終わると1人ずつ、講師からアドバイスをもらいます。空気の流れと抵抗の大きさについてイラストを用いた説明を受け、どこを修正すれば抵抗を減らせそうか、具体的なヒントが与えられました。
より理想的な形がイメージできたら、2回目の製作に入ります。頭でイメージできても、それをしっかり形にできなければ良い数値は出ません。子ども達は、1回目よりもさらに慎重に、集中して作業を進めます。
すべての計測が終わると、結果的にほとんどの子が2回目できっちり抵抗値を下げており、講師はとても感心していました。


15空力⑲ 15空力⑳
15空力⑳’ 15空力⑳”

最後に、講師が同じ材料で作った、最も良い数値を出しているクルマを見せてもらいました。先がシュッと尖っていて、シンプルだけど本当に美しい形をしています。装置の中でドライアイスの煙を含んだ風を当てると、煙は少しも波打つことなく、スーッと自然に分かれて通り過ぎていきました。確かに、空気抵抗が少ないのが一目瞭然ですね。 

子ども達の中で数値の良かった上位3名は表彰され、それぞれ賞品を受け取りました。少しの差で入賞できなかった子もたくさんいて、よく考えられた素晴らしい作品ばかりでしたね。
“自分で考え、試行錯誤する”モノづくりの醍醐味を味わう貴重な体験だったのではないでしょうか。


15空力⑳”’ 15空力⑳””