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館長コラム

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2024年4月の館長コラム

2024年4月1日

日本の桜とモノづくり

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

 2024年は桜の開花が遅れ、ここ数年では珍しく満開の時期が4月となりました。国立国会図書館のウェブサイトによると、桜には現在300種以上の品種がありますが、日本で目にする7~8割はソメイヨシノとされています。ソメイヨシノの誕生は江戸時代後期で、全国に広がったのは明治以降でした。増やしやすさや育てやすさ、花が咲き終わってから葉が出る性質、一斉に咲いて散るという特徴が好まれ、日本各地に植えられたそうです。

 江戸時代から明治時代は、日本のモノづくりにとっても重要な時期です。日本の産業技術史研究をリードする鈴木一義氏は、平和が長く続いた江戸時代に培われ受け継いできた風土は、日本の産業に独自の文化を形成したと指摘しています。技術を独占することなく、切磋琢磨しつつ、共存を図ろうとする考え方は、企業の利潤や規模拡大の追求よりも、人のため、地域のため、社会のため、という日本のモノづくりの基本に影響を及ぼしていると言えるようです。

 当館では今月以降、さまざまな企画展を連続で開催いたします。桜をはじめとする季節の花々を愛でつつ、開館30周年の当館の催しを是非お楽しみください。

【参考資料】
国立国会図書館ウェブサイト 本の万華鏡 江戸の花見~春爛漫~
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/9/2.html
鈴木一義「日本の『モノづくり』文化」『日本機械学会誌』 2015年、Vol.118、No.1156、p.10-1

咲き誇るソメイヨシノ(東京都世田谷区、2023年3月撮影)

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