開館27周年~1994年に思いを馳せて~

 

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。当館は本年6月11日に開館27周年を迎えます。これまでお越しいただいた644万人を超えるお客様に、心から感謝申し上げます。

当館は、トヨタグループ13社(現在は17社)の共同事業として、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎氏の生誕100周年にあたる1994年6月11日に開館いたしました。喜一郎氏がもし存命であれば今月127歳のお誕生日を迎えるわけですが、喜一郎氏は病気のため1952年3月27日に57歳で急逝しました。喜一郎氏の父・豊田佐吉翁が亡くなった年齢が63歳であったことを考え合わせても、早過ぎる死でした。

本年3月にトヨタ自動車が発行した創業者伝記「豊田喜一郎」の序文で、喜一郎氏の孫である豊田章男社長はこう記しています。

「喜一郎と創業期のメンバーは自動車事業の基盤を築いたにもかかわらず、その実現を目にすることなくこの世を去りました。その恩恵にあずかった我々が、意思を継いでやらねばならないことは、かつて彼らがしてくれたように、次の世代の人たちに向けた基盤をつくることではないでしょうか。先人の伝記が物語るのは過去ではなく明日への橋渡しなのだと信じます」

当館は「研究と創造の精神」と「モノづくり」の大切さを次の世代の人たちにお伝えすることを大きな使命としています。あらためて、先人達の大変な苦労が技術の進歩をもたらし、それが産業の発展を促したことを、広くご理解いただく努力を重ねる決意を新たにいたしました。

さて、当館が開館した1994年は、6月にオウム真理教による松本サリン事件が起きて世相に暗い影を落とした一方で、7月には向井千秋さんが日本人初の女性宇宙飛行士としてスペースシャトルに搭乗し、日本中を沸かせました。私にとりましてもトヨタ自動車に入社して10年、一念発起して母校の大学院に社会人入学し、会社勤めと大学院生の二足の草鞋を履いた思い出深い年です。27年前に思いを馳せつつ、気持ちも新たにお客様をお迎えしてまいります。よろしくお願いいたします。

 

トヨタ産業技術記念館の開館記念式典(1994年6月)