春の訪れに寄せて~菅原道真公と「飛梅」~

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

 

「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」

(現代語訳※ 春風が吹いたら、香りをその風に託して大宰府まで送り届けてくれ、梅の花よ。

主人である私がいないからといって、春を忘れてはならないぞ)

 

この和歌は、学問の神様として知られる菅原道真公(845年-903年)が、政略によって京の都から大宰府(福岡県)に左遷される際に、自宅の梅の木に詠んだ別れの歌です。その梅が道真公を慕って一夜で飛んできた、と伝えられているのが御神木「飛梅(とびうめ)」で、さだまさしさんの2ndアルバム「風見鶏」(1977年)に収録された楽曲で知った方もおられるでしょう(私がそうです)。

日本人は古くから、梅、桃、桜などの開花で春の訪れを感じてきました。四季がはっきり分かれる日本においては、厳しい冬の寒さを耐え抜いて、明るい日差しが注ぐ春を迎えることは、格別の歓びだと言えるでしょう。道真公の「春を忘れるな」という言葉は、不遇の晩年においても希望を失わず、誠を貫いた生き方を映しているように思います。

トヨタ産業技術記念館では、4月から記念館ソフィアをはじめ、多くのニューフェイスを迎えました。今はまだ蕾ですが、いずれ個性溢れる花を咲かせるように頑張っておりますので、是非ご来館いただき、励まして頂ければ幸いです。

 

※太宰府天満宮ウェブサイト https://www.dazaifutenmangu.or.jp/about/michizane

 

春の訪れを美しく告げる桜の花(撮影地:愛知県みよし市、2019年4月)