「発明の日」に寄せて

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

4月18日は「発明の日」。1885年(明治18年)のこの日に、初代特許庁長官を務めた高橋是清氏らが「専売特許条例」を公布して日本の特許制度が始まったことを記念し、1954年(昭和29年)に通商産業省(当時)が決めたものです。

トヨタグループの始祖である豊田佐吉翁は、18歳の時にこの「専売特許条例」の内容を聞き、自らの知恵で新しいものを創造する発明に一生を捧げよう、と決意したとされています。

佐吉翁は1890年に完成した豊田式木製人力織機で初めて特許を取得(1891年5月14日)した後、1896年に日本で最初の動力織機である豊田式汽力織機を完成させました。この動力織機の特許を取得した8月1日(特許取得は1898年)を、愛知県では「愛知県の発明の日」と定めています。

佐吉翁の長男である豊田喜一郎氏も、発明家の確かな血筋を受け継いでいました。

糸を紡ぐ紡機の技術は、大正から昭和初期にかけて、西洋技術に改良を加えた日本独自の技術が生み出されました。中でも豊田喜一郎氏の発案による「スーパーハイドラフトリング精紡機」(1937年)は、従来は粗紡機と精紡機の二工程で行っていたドラフト(引き延ばし)作業を一台で行うようにした画期的な精紡機で、その後の紡績の合理化に大きく貢献しました。

これらの紡織機は、すべて当館の繊維機械館に動態保存されています。一部は実演も行っていますので、爽やかな新緑の季節に当館に是非お越しいただき、ご覧いただければと思います。

 

スーパーハイドラフトリング精紡機(1941年製、繊維機械館内)