花火大会のはじまり~鎮魂と疫病退散~

 

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

本格的な夏が到来しました。外出も躊躇するような酷暑でも、これだけは屋外で鑑賞したいと思わせるのは、夜空を華麗に彩る打ち上げ花火でしょう。

花火の伝来については諸説ありますが、博物学者の荒俣宏氏が監修した書籍によれば、日本で初めて花火を見た人物は、大河ドラマで話題の徳川家康公。1613年に英国国王の使者と中国の商人が献上した花火は、筒から火花が出る程度の簡単なものだったようです。

八代将軍・吉宗公の治世である1733年には、隅田川で「両国の川開き」と称する花火大会が始まります。現在につながるこの花火大会の目的は、前年の飢饉で亡くなった人々の霊を慰め、疫病を退散させることでした。

近年の自然災害からの復興においても、花火大会の復活は、被災した人々に勇気と希望をもたらしました。コロナ禍から4年ぶりに日常を取り戻しつつある中、この夏の花火はまた格別な輝きでしょう。

【参考資料】荒俣宏監修『モノのはじまりえほん』日本図書センター、2017年、p.40-41

 

鎮魂と復興への願いをこめた花火大会

(岩手県大船渡市、2013年8月)