防災の日に寄せて ~関東大震災から100年~

 

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

ちょうど100年前、1923年9月1日に相模湾北西部を震源とするマグニチュード7.9の大地震が発生しました。近代日本における災害対策の出発点となった、関東大震災です。

内閣府によれば、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県で震度6を観測したほか、北海道道南から中国・四国地方にかけての広い範囲で震度5から震度1を観測し、10万棟を超える家屋が倒壊。発生が昼食の時間と重なったことから、多くの火災が発生し、大規模な延焼火災に拡大しました。被害を受けた住家は総計37万棟にのぼり、死者・行方不明者は約10万5000人に及ぶなど、甚大な被害をもたらした自然災害でした。

この関東大震災をきっかけとして、9月1日が防災の日と定められました。以降も日本では、阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)のような甚大な災害だけではなく、毎年のように台風や大雨による被害が発生しています。自然災害は稀にしか起きないものではなく、常にその発生を意識して、リスクに備えるべきものでしょう。

100年前の関東大震災の当日、トヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎氏(当時29歳)は偶然東京にいましたが、九死に一生を得て現地を離れ、何日もかけて苦労しながら名古屋に戻りました。帰宅した際は泥だらけだったそうです。当時、豊田紡織は刈谷に新工場を建設中でしたが、喜一郎はこの工事を一旦中断して、技師4名を東京に派遣。震災で倒壊した状況を調査させて、工場建設を根本からやり直しました。自然災害の発生を防ぐことはできなくても、被害を減らすための備えは可能です。この減災の考え方は、現在も脈々と継承されています。

 

【参考資料】

内閣府「関東大震災100年」特設サイトhttps://www.bousai.go.jp/kantou100/index.html

トヨタ自動車「豊田喜一郎」2021年3月、p.148