環境技術企画展に寄せて~エンジニア魂を感じてください~

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

皆さんは、美輪明宏さんの代表曲「ヨイトマケの唄」(1965年)をご存知でしょうか?灼熱の工事現場で苦労して働きながら自分を育ててくれた亡き母に対して、立派に成長した息子が感謝を捧げる名曲です。曲の終盤で、懸命に勉強して高校、大学を卒業し、現在はエンジニアとして働く自分の晴れ姿を「母さん、見てくれ」と願う場面が描かれています。

当館では、自動織機の発明に生涯を捧げた豊田佐吉翁、紡織技術者を経て国産自動車の開発に人生を賭けた豊田喜一郎氏というふたりのエンジニアの生涯をご紹介しています。しかし、当館で展示している多くの技術や製品は、佐吉と喜一郎のような伝説の人物だけではなく、名もなきエンジニアたちが、情熱を持って力を合わせて開発し、苦労を重ねて実用化したものなのです。

当館は2024年6月に開館30周年を迎えます。これを記念して、自動車開発技術の歴史と未来への展望をテーマとした企画展を、トヨタ自動車㈱ほかのご協力の下で、 2023 年から3年程度に渡って連続で開催いたします。その第1回企画展として、10月から「環境技術~人と地球を幸せにするクルマづくり~」をテーマに、自動車館で開始いたします。

初代プリウス(1997年)が発売されてから26年、物心ついた時からハイブリッド車が家庭にあった世代が、既にエンジニアとして第一線で活躍しています。佐吉翁と喜一郎氏が完成させたG型自動織機(1924年)から1世紀、喜一郎氏が豊田自動織機製作所(当時)に自動車部を設置(1933年)してから90年。この企画展が、各時代における社会からの要請に対応し、クルマが人々の幸福な暮らしに寄り添い続けることを信じて、技術開発に取り組んできた何世代もの名もなき無数のエンジニアたちの魂を感じていただく機会になれば、これに勝る喜びはありません。

自動車開発の歴史と未来 第1回企画展
「環境技術~人と地球を幸せにするクルマづくり~」