教訓の伝承に関わる30年

 

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

今月11日で、東日本大震災(2011年)から14年を迎えます。また、本年は阪神・淡路大震災(1995年)から30年の節目の年です。この30年間に、東日本大震災をはじめとして、熊本地震(2016年)、西日本豪雨(2018年)、能登半島地震(2024年)など日本では多くの自然災害が発生し、甚大な被害をもたらしました。

1931年創刊の総合科学雑誌「科学」は、本年1月号で「震災の教訓は活かされたかー阪神・淡路大震災30年」という特集を組んでいます。災害に対する日本社会のあり方を一変させた大震災の教訓を活かせているだろうかーと問い掛け、いま学び、語り継ぎ、活かすことが求められている、と論じています。

前掲の特集で、神戸大学の室﨑益輝名誉教授は、教訓の伝承に関わる30年という期間について、①教訓が活用され改善が図られる期間、②教訓を忘れ風化を許す期間、③教訓が付加され刷新される期間、と整理し「教訓の再発見や再提起を如何に図るかが問われる」と指摘しています。昨年6月に開館30周年を迎えた当館において、「教訓」を2月の館長コラムで触れた「夢」や「技術者魂」に読み替えるとどうでしょう。活用や刷新を伝承する館であり続けたいと思います。

(出典:室﨑益輝「阪神・淡路大震災の教訓をいかに活かすか」岩波書店『科学』2025年1月号、p.12)

大地震による火災で炎上する神戸市中央区の市街地
(1995117日、画像提供:人と防災未来センター)