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2025年4月の館長コラム
桜の開花予想
トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。
3月から4月にかけて、日本では桜の開花予想が人々の大きな関心事になります。四季の中でも、厳しい寒さの冬を乗り越えて迎える春の訪れは、他の季節の到来にない嬉しさを伴っているように思います。尾崎亜美さんの名曲「春の予感」(1978年、南沙織さんへの楽曲提供)のサブタイトルは「I’ve been mellow」。春は、誰もが穏やかになる季節と言えるかもしれません。
現在、桜の開花日は、複数の民間気象事業者が独自に予想して発表していますが、2009年までは気象庁がDTS(温度変換日数)という手法を用いて開花予想を行っていました。桜は、前年の夏頃に翌春咲く花のもとになる花芽(かが)を形成し、休眠状態に入ります。秋から冬にかけて5℃前後の低温に一定期間晒されると、休眠期間から覚めるそうです。これを「休眠打破」と呼び、春先の気温の上昇に合わせて花芽が発育し、開花します。この花芽が休眠から覚めて開花するまでの生長量を、気温によって推定する手法がDTSです。
DTSによる開花予想日は、実際の開花日との差が平均2~3日程度だったそうですが、予想日を発表してから開花までの天候や気温経過の推移によっては、差が大きいこともあったようです。このような地球温暖化に伴う気候変動の影響は、確かに懸念すべきかも知れませんが、やっと咲き始めた桜の花を愛でる気持ちの余裕も、決して失いたくないものです。
(参考:青森地方気象台「さくらの開花とその予想について」『あおもりゆきだより』第3号、2024年)
トヨタ産業技術記念館に咲くソメイヨシノ(2024年4月撮影)