氷雪路面を走るための技術

 

トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

昨年の12月24日、名古屋市では8年振りに10㎝を超える積雪を記録しました。幸い、当館では開館に問題はなく、通常通りお客様をお迎えすることが出来ましたが、東海地方の高速道路では多くの区間が通行止めとなるなど、クルマでの移動に大きな影響がありました。

かれこれ40年前、私が大学生だった1980年代の前半は、冬季タイヤといえばスパイクタイヤが一般的でした。タイヤにスパイクピンを打ち込んだもので、氷雪のない舗装路ではガリガリとアスファルトを削ってしまいます。やがて粉塵や騒音が社会問題化し、1991年4月に販売を中止。代替として開発が進んだ技術がピンのないスタッドレスタイヤであり、1982年にミシュランタイヤが開発したXM+S100というタイヤが日本初の製品だとされています。

スタッドレスタイヤは、表面のゴムを柔らかくし、タイヤパターンにサイプと呼ばれる細かい切れ込みを多く入れること等によって、氷上摩擦力を向上させています。ただ、制動に限界があることは事実で、発泡ゴムと呼ばれるスタッドレスタイヤ専用の特殊ゴムの開発やサイプの三次元化など性能向上のための技術開発は、タイヤメーカー各社によって今も絶え間なく続いています。私たちは、スタッドレスタイヤの利点と限界を理解して、安全な冬季ドライブを心掛けたいですね。

【参考資料】
GAZOOコラム「その歴史100年以上!? スタッドレスタイヤの歴史をミシュランに聞いてみた」
https://gazoo.com/column/daily/22/12/01/
藤田一人「氷の上で車をとめる-スタッドレスタイヤ技術の紹介-」
日本機械学会誌、Vol.115、No.1123、2012年

氷上摩擦力向上の取り組みが続くスタッドレスタイヤ