新紙幣に見る印刷技術と匠の技

 トヨタ産業技術記念館 館長の大洞和彦です。

 20年ぶりに紙幣(日本銀行券)のデザインが変更され、今月3日から発行されることになりました。一万円札の肖像は実業家の渋沢栄一、五千円札は女子教育家の津田梅子、千円札は細菌学者の北里柴三郎に変更になるほか、偽造抵抗力確保のため、さまざまな新しい印刷技術が導入されています。

 国立印刷局や日本銀行によると、新紙幣の主な特徴は「偽造防止技術」と「ユニバーサルデザイン」の二つです。偽造防止技術としては、額面文字を高く盛り上げる深凹版技術、高精細な「すき入れ(透かし)」や、回転する3Dホログラムなどを導入。ユニバーサルデザインとしては、額面数字の大型化や指感性に優れた識別マーク、券種ごとに異なる形状・位置のすき入れなどです。
 また、肖像についても、専門職員である工芸官が手彫りで彫刻しており、1ミリの幅に10本以上の線で陰影や質感を表現する「匠の技」を実用技術として活用しているそうです。

 当館でも新紙幣の流通に対応し、総合案内カウンター前の入場チケット販売機を、今月8日に更新します。キャッシュレス化が進む昨今ですが、新紙幣で印刷技術と匠の技を体感できることを楽しみにしています。

 【参考資料】国立印刷局ウェブサイト https://www.npb.go.jp/ja/n_banknote/

新一万円札のデザイン(国立印刷局ウェブサイトより)